「幸せになりたい!」
この言葉に、あなたは何を連想しますか?
「お金が欲しい」「起業したい」「穏やかに過ごしたい」など人の数ほど答えはあります。
そこに「結婚」と答える女性も一定数いるはずです。
ただ果たして「結婚=幸せ」なのでしょうか。
結婚した瞬間は幸せを感じられるのかもしれません。
でも、その先は?結婚生活をずっと幸福な時間にするには途方もない努力が必要です。
「そんなの当たり前だけど、結婚した方が安定するしその方が幸せな人生を送れる」
果たしてそうなのでしょうか。
これは「結婚しなくても幸せに生きていけるのでは」と気付き始めたアラサー独身女性達の物語です。
エピソード1:親友の結婚
31歳独身・フリーライターの私、ナルコは、中学からの同級生と今でも付き合いがある。
いわゆる幼馴染グループで、LINEでも繋がっているし、特に仲が良い子は今でもよく食事に行く。
中でもイズミは、私と同じでオタクな事もあり、しょっちゅう遊んだり通話したりしている。
今回はイズミの親友ウエノが年下の男性と結婚した時の話だ。
結婚式に「招かれてしまった」
その日は私の家で、イズミ、そしてバリキャリOLのケーコという幼馴染グループの一部で集まっていた。
幼馴染グループといっても、その中でもハッキリと「人種」が別れる。
「既婚」か「未婚」かだ。
30歳を越えると既に子どもがいる子もいて、いくら幼馴染といえど人生観・価値観に違いが出てくるのだ。
私・イズミ・ケーコの3人は「独身且つ彼氏いない組」に該当する。
イズミは浮かない顔で「ウエノの結婚式に招待された」と話し始めた。
ナルコ「ウエノの結婚式に招待って、そりゃ当たり前じゃない?」
その明るい髪色とは反対に暗い面持ちのイズミに、私は声をかけた。
ウエノはイズミと卒業してからもずっと仲が良かった。
ウエノは半年ほど前から彼氏と同棲をはじめ、今年籍を入れて、これから式を挙げるというのだ。
ケーコ「イズミはウエノと毎年旅行とか行ってたでしょ。それは呼ばれるよ。優しい子だし」
ケーコも、お茶を飲みながらそれに頷いた。
イズミは苦々しい顔をしている。
イズミ「まあ、去年で最後になると思うけどね。『来年もまた旅行行こうね』って言ったら、初めて『スケジュールが合えばね』って言われたから、今年はもうないよ」
ケーコ「それは……悲しいわね」
ナルコ「家庭が優先になるのは仕方ないかあ」
私たちの感想をよそに、イズミはため息をついて、話し始めた。
イズミ「結婚式って会場で呼べる人数決まるじゃない。新郎の方は友人とか同僚が多いらしいんだけど、ウエノは親族が多くなっちゃって、友人の席が3つしかないんだよね」
だとしてもイズミさんは呼ばれるよ。私とかはそこまで親しくないから、絶対呼ばれないもん
ケーコの拗ねた口調は、呼ばれなかったことに対する安堵を隠しきれていなかった。
ケーコと私は、あまり結婚式に出席するということが得意ではないのだ。
でもイズミの方は自ら幹事をかってでるくらい、パーティとか祝い事は好きなはずだ。
ナルコ「イズミ以外の2人は誰なの?」
イズミ「Yさんとモモ」
Yさんは幼馴染グループからは外れるが、2人とも昔からの付き合いだ。
ナルコ「そりゃ妥当だよ」
でも聞いてよ!Yさんに『ウエノの結婚式行く?』って聞いたら『お祝いできる相手だったらよかったんだけどね』って返ってきてさ……私も同じ意見だったんだよ。それで行くって返事したら、見事Yさんは欠席したんだよね!
Yさんは半分世捨て人のような独特な世界観の中で生きているから、確かにやりかねないと思った。
ケーコ「Yさんがそこまで言うって、そんなに新郎の人って、良くないイメージの人なの?」
ケーコは新郎に会ったことがない。私も、ウエノと一緒にいるのをちらっと顔を見たくらいだ。確か、6歳年下だったはず。
信用できない男
イズミは私たちよりずっとウエノのことを知っている。イズミはこれまでのウエノの男性遍歴を語り始めた。
イズミ「ウエノはさ…結構付き合った男に左右されやすいタイプで、なおかつダメ男に釣られちゃうんだよね。付き合ってた相手が実は既婚者だったとか、ほぼヒモみたいな男だったりとか。結局別れたから良かったんだけど」
ケーコが眉をひそめた。
ケーコ「じゃあ今回の人も怪しいってこと?」
イズミは頷いた。
イズミ「新郎が、いわゆるガジェット好きでさ。ウエノは電気製品とかそんな興味なかったのに、いきなりiPadとか買ってるんだよ」
ケーコ「それくらいはいいんじゃないの?」
イズミ「それだけじゃない。Yさんがこの間、ウエノとバスに乗ったんだよ。そしたらウエノが『バスの運転手さんって、無能だよね』って、突然言い出したらしくて」
私は即座に反論した。
ナルコ「それ、聞き違いじゃないの?ウエノって絶対そんなこと言わないタイプだし」
イズミ「Yさんも聞き違いであってほしいって言ってたんだけど……どうも新郎が割と店員さんとかに当たりが強いタイプっぽいんだよね。ウエノはそれこそすごい優しいから相手に影響受けやすいっていうのもあると思うんだけど、良くない影響受けてる気がするんだよ」
イズミは自分が持ってきたワインをぐいと飲み干した。
親友が信用できない男と結婚するのは、確かに、悲しいことだ。
なんで旦那を呼ぶんだよ!
ケーコはおもむろに携帯を出していた。
ケーコ「そういえばさ、この間幼馴染LINEとは別のグループLINEで旦那さんの話出てたよね」
ナルコ「えっ、なにそれ」
ケーコ「あった、イズミさんが幹事で、いつも誘ってくれるイベントのグループLINEだ」
私はそのイベントに興味がなかったので、そのLINEグループの存在は知っていたけど、参加はしていなかった。
ケーコとウエノはそのグループにも入っていたのだ。
イズミ「そう、それ、本当にどうしようかと思った」
イズミは更に顔を暗くした。
ナルコ「なにがあったの?」
イズミさんが、いつものようにイベントに誘ってくれたんだけど、そこでウエノが『旦那も連れてっていい?』って全体に投げたんだよね
ナルコ「えっ」
私は驚いた。他の人も彼氏や旦那さんを連れてくるイベントならまだしも、女の子だけの同級生グループに、なぜ自分の旦那を入れたがるのか。
しかも全員がウエノと懇意というわけではない。
面識はあるけど、そこまで深く話し込んだことはない仲間だっているグループなのだ。
旦那さんの紹介にしたって、無理やりすぎる。
それ、事前にイズミに個別LINEで聞くべきことなんじゃないの…?
イズミは破れかぶれの顔で笑った。
イズミ「私には言いづらかったんだろうなあ。だから、グループLINEに投げたんだよなきっと!」
イズミはそのLINEを見て、真っ先にケーコに連絡したらしい。
すると、ケーコはネット上の様々な掲示板で同じような状況にあった人たちのQ&Aを探してきた。
そういう人、世の中に一定数いるみたいなんだよね……
ナルコ「いやいやいや!会食とかなら分かるけど、遊びに行くイベントでしょ?そんなところに突然来られてもさ、距離感とか接し方困るじゃん!」
イズミ「それを『連れてきていい?』って聞いちゃうのが、ウエノなんだよ……結局、他のメンバーがもう決まっちゃったってことで乗り切ったけどね」
ナルコ「そっか……」
その一連の話を聞いて思った。
世の中には一定数いる。
自分の彼を仲間に認めてもらうことが、自己肯定につながっている、という女の子が。
そしてここにいる3人全員が、そんな女の子の思考を全く理解できないということも。
結婚なんて、ギャンブルじゃん!
イズミは、普段のウエノのふるまいから直感的に新郎に対して不信感を抱きつつも、こう付け加えた。
ケーコ「まあ、直感っていうのはあるだろうけど……」
ケーコは少し釈然としない様子だった。
イズミ「でもこれまでは結婚しなかったから良かった。ただ今回は…やっぱりさ『時期』だったんだよ。結婚に対する焦りが、ウエノを『この人しかない』って思わせたんだよ」
場の空気が硬直した。
ケーコも、先ほどとは表情が変わっていた。
ナルコ「確かに、ウエノ、子ども欲しいってずっと言ってたもんね。若いうちに産んでおきたいね」
そう、それも!それもさ、ウエノずっと言ってたじゃん。それが、新郎が『子どもはまだいいかな』って言った途端に、諦めたんだよ!
ま、まじかよ。確かに相手、まだ若いからな……
私はそもそも子どもを持ちたいと微塵も考えたことがないけど、ウエノがそう簡単に自分の希望を保留にしてしまうのかと思うと、結婚というものに恐ろしさすら感じた。。
子どもがいる家庭ありきで結婚するはずのウエノなのに。
ケーコが口を開いた。
ケーコ「イズミさんってさ、幹事とか旅行の手配とか、すごくうまいじゃん。プレゼントとか考えるのも得意だし」
ナルコ「確かにそうだよね」
ケーコ「いわゆる『彼氏力』って点では、すごく高いんだよね。ウエノと仲良かったのもそういう相性があったと思うんだけど」
私とケーコはイズミを見つめた。
イズミは口を開いた。
イズミ「あのさ……。正直言って……ウエノの旦那って、ウエノと付き合ってせいぜい1年とか、そのくらいじゃない」
ケーコ「そうだね」
イズミ「そういう人と結婚するって、もう、賭けじゃない?
私はずっとウエノ見てるから、彼女がどういうものが好きで、どういう人なのかってわかってるけど、私ほどウエノのこと知らない人と結婚するって、それ本当に大丈夫なの?」
私は黙っていることしかできなかった。
ケーコだって、イズミの言う通りだと思ってるけど、確認するかのように口を開いた。
ケーコ「でも本人は今幸せなんだよね……?」
でも、幸せになるかどうかなんて、これから先分からないじゃん。もう結婚なんて、ギャンブルじゃん!
私もケーコも、何も言えなかった。
3人とも、口には出さなかったけれど、分かっていた。
自分たちの人生は、ウエノと違って、「結婚」が「幸福」にむずびついていないことを。
「結婚」が「幸福」につながるという確証を全く持てないということを。
だから30歳を過ぎても、趣味に忙しいし、彼氏もいないし結婚願望もない。
ケーコやイズミは親に結婚を急かされていても、動じる様子がない。
結婚なんてギャンブルだよ。よくそんな危ないものに手を出せるよ
私はぽつりと言った。
ナルコ「うちの親なんて、調子いいときにノリで結婚したけど、結局ひどい別れ方したもん。なんでそんなやばいことを、平然とやってのけられる人たちがいるんだろう」
私たちは「結婚」という選択肢を捨て始めていた。
生産性ってなんだ?
今回は「結婚が幸せと結びつくのか」というテーマでお話をしました。
一時期、「子どもを産まない女性は生産性がない」という言葉が世間で流れたことがありました。
私は「果たして女性が提供できる生産性は子どもだけなのだろうか」
「男性は子どもに対して生産性を負わなくていいのだろうか」という2つの疑問がわきました。
確かに出産は女性が担う役割ですが、子どもには父親がいるはずです。
射精をしたその瞬間から、着床したらもう全部母親が子どもに対しての責任を負うというのはおかしいくないかと思います。
結婚しないで男女が子どもを育てるという選択肢ももちろんありますが、制度的な面から言っても、結婚が前提になってくる場合が多いでしょう。
私自身個人の意見として、どの子どもにも幸せになってほしいと思います。
それが確約できない状態で子どもを産むのは無責任だと感じてしまいます。(あくまで私が産む場合の話です)
一方でフリーのライターとして、他にもいろんな仕事をしておりますが、そうした仕事は生産性とは言えないのでしょうか。
独身女性だからこそ出産後の女性を支えるという場面もあるはずです。
結婚をしても子どもを産まない、産めない女性もいるはずです。
1人1人に、人生があります。個性、環境、様々な要因が絡み合って人は存在しています。
「結婚=幸せ」「出産=生産性」と捉えるのは、あくまで一つの見方だと私は考えます。
もし、そういうことで悩んでいる独身女性の方がいるのなら、私はこの記事を通して「自分自身を大切にすることが一番大切ではないか」ということを伝えたいです。
それがこの連載のテーマでもあります。
次回予告 エピソード2 :女としての承認欲求
次回は、会社員をしながら地下アイドルをする女の子のお話です。
彼女がいかにしてチヤホヤを求めたか、そして結婚し子どもを産んだ時にどう「アイドルの自分」を演出したか。
今回とは違った形の「結婚」がそこにはあります。
乞うご期待です!
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